■めちゃスポーティな「ミライース」とは
2024年3月16日・18日に開催された「Toyota Gazoo Racing Rally Challenge 2024 in 沖縄」。
同県初のラリーとなりましたが、そこにはダイハツ「ミライース」が参戦していました。
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筆者(山本シンヤ)は沖縄初開催となるTGRラリーチャレンジにトヨタの早川茂副会長のコドライバーとして参戦してきました。2年前に豊田章男氏から「早川さんのコドラやってよ!」のひと言がキッカケでした。
早川氏が使うマシンは進化型GRヤリスに搭載された「DAT」の開発車両で、筆者はコドラをしながらも、「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」のリアルを、最も間近で取材させてもらいました。
実はラリチャレで同じような取り組みをしているマシンがあります。
それがD-SPORT Racingがエントリーする「D-SPORTミライース」です。
このマシンは3月1日-3日に開催された全日本ラリー選手権「三河湾ラリー」でデビューしましたが、「より身近なラリチャレにも」と言うわけで、今回のTGRラリーチャレンジに参戦。
ミライースは「低燃費」、「低価格」、「省資源」を柱に開発された「第3のエコカー」として登場。現行モデルは2017年に登場した2代目になります。
そんなミライースをラリーカーに仕立ててあります。ただ、単に競技に必要な安全装備(ロールバー/ハーネス)の追加ではなく、何とコペン用の直列3気筒ターボ+5速MTに換装。
それに伴い熱対策(前置きインタークーラー、ダクト追加)やECUの変更、サスペンションやブレーキの強化が行なわれています。
当然ながら、変更が行なわれている箇所に関しては言わずもがな、シッカリと改造申請が行なわれています。
その中でも筆者が気になったのは、「なぜ、このようなクルマを作ったのか?」の部分です。そこで開発を担当するドライバーの相原泰祐氏に聞いてみました。
「身近な軽自動車をベースにしたスポーツモデルの提案になります。
実はスズキさんのアルトワークスを横目に『僕らもあんなクルマが作りたいよね』と思っていましたが、そんなアルトワークスも生産終了してしまいました。
『それなら次は我々が……』と言う思いもありました」
そんなD-SPORTミライース最大の強みは、直列3気筒ターボと安全装備をプラスしても710kgと言う軽量ボディの組み合わせで、走りのポテンシャルと言う意味ではコペンよりも高いそうです。
ここ最近のダイハツのセダンタイプの軽自動車はベーシックなモデルが主でした。
ハイト系と異なり全高は低い上に軽量と基本素性の良さ、そしてアフォーダブルな価格に目を付けたクルマ好きがカスタマイズを行ないホットハッチに仕立てている人も多いです。
実はミライースの前身とも言える「エッセ」は、カスタマイズベースとしてその筋では非常に人気が高いです。
そんなモデルを「ダイハツ自身で提供したい」と言う思いがあるのでしょう。気になる価格は「ラリー車に仕立てても200万円以内」を想定。「これなら気軽に!」と言えるでしょう。
特に今回ラリチャレが行なわれた沖縄は日本の中でも軽自動車の比率が高い地域なので、この地域でのモータースポーツ活性化の切り札になる可能性もあるかなと思います。
■認証不正問題は残るが…いまダイハツがやるべきコトは?
ただ、ダイハツは現在、認証不正問題で世の中を騒がせています。
3月1日付で井上雅宏新社長を中心とした新体制がスタートしたものの、はっきりとした経営方針は発信されていません。
そうしたなかで「モータースポーツなどけしからん!」とお怒りの人もいるかもしれませんが、この取り組みはPR活動ではなく車両開発の一環です。
実は2022年にダイハツは13年ぶりにモータースポーツ活動を再開。ダイハツのHPには「DAIHATSU GAZOO Racing」の名の元に、様々な活動が行なわれています。
その内容はTOYOTA GAZOO Racingと全く同じで、「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」が目的になっています。
すでに「コペン(WRC/全日本ラリー)」や「ロッキー(TGRラリーチャレンジ)」をベースにしたモデルでのモータースポーツ活動が行なわれていますが、ミライースもその取り組みのひとつと言うわけです。
不正認証問題では効率重視が問題視されましたが、ダイハツ社内にはその流れを自らの手で変えようとしていた人達がいたのです。
実は先日のダイハツ記者会見の席で、ダイハツ不要論を唱える記者から「トヨタはダイハツではなく提携しているスズキに軽自動車を任せればいいのでは?」と言う質問の回答に納得できず、「それならば、ダイハツにできてスズキにできないことは何だ?」と。当然、ダイハツから明確な答えは出ませんでしたが、筆者なりに考えてみました。
ラインナップで見ると、確かにスズキにはジムニー、ダイハツにはコペンとそれぞれには用意されていないモデルがありますが、これは商品戦略上の問題で、技術的に「できる/できない」の話とは異なります。
では一体何なのか、筆者の結論は「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」かなと思っています。
スズキもかつては「スズキスポーツ」を率いてモータースポーツ活動を行ない、そこでのノウハウ・知見が活かされたモデルが生まれたものの、リーマンショックの影響もあり2010年のWRC撤退を機にスズキスポーツ株を売却。それ以降はそのような活動は行なれていません。
ダイハツも2009年に同様の理由でモータースポーツ活動から撤退しましたが、トヨタのやり方を学ぶべく復活。
それもダイハツの強みが活かせる部分、トヨタよりもより手軽に、より身近に、よりアフォーダブルな部分に注力した活動が主となっています。
もちろん、この活動ですぐに何かが変わるかどうかは分かりませんが、筆者はダイハツ再建のための重要な活動になると信じています。
そのためには、周りから何を言われようと「参戦し続ける」こと。クルマ屋の問題はクルマで解決するしかないのです。
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